一つの認識描像

農業廃棄物が環境に優しい包装材に!バナナの幹で作るエコ素材とは?

持続可能な社会の実現が謳われて久しい現在、石油に依存した社会を変えるために、プラスチックバックの使用を減らそうという運動が行われています。レジ袋が有料になったり、マイバッグ持参で2円引きなどというのはよく耳にします。なんと、今回紹介する研究によると、これまで廃棄されていたバナナの幹がレジ袋や食品トレーなどの材料になるそうです!さらにこの素材には環境に優しい性質がたくさんあるようです。一体どのように製造できて、どのような性質を持っているのでしょうか?

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バナナの木。緑色の状態で出荷される。

バナナの疑似茎で作られる包装材料が備える環境に優しい様々な性質とは

ニューサウスウェールズ大学の二人の研究者は、バナナ大農園の廃棄物を包装材料に変える新しい方法を発見しました。その材料は生分解性を持つだけでなく、リサイクルも可能といういいトコづくしの性質を持っています。Jayashree Arcot准教授とMartina Stenzel教授は農業で出てくる廃棄物を価値のあるものに変え、さらにその他の問題も解決するような方法を模索していました。その候補として上がったのが、バナナ業界でした。実は、バナナはその植物全体の12%(実の部分)しか使われず、ほかは廃棄されてしまうのです。

「バナナ産業にこんなに廃棄物が多いのは、収穫後に木が死んでしまうからです。我々は特に、疑似茎に関心がありました。疑似茎というのは層構造をしている肉質の幹で、収穫後に切られて大半は捨てられてしまいます。いくらかは織物に使われたり、コンポストに使われたりしますが、それでも大量の廃棄物が出ます。」

と、Arcot准教授は言います。
二人は、この疑似茎が非常に利用価値のある物質であるセルロースの原料になりうるのではないかと考えました。セルロースは植物を形作る構成要素で、包装材料や紙製品、織物や医療にまで使える可能性を秘めている物質です。Royal Botanic Garden Sydneyという大農場から安定して疑似茎が供給されるので、これを使ってセルロースの抽出を行い、それが包装材料に適しているのかをテストしました。
「疑似茎は90%が水分なので、固形物は10%になります。我々はそれらを研究室に持ってきて、小さくカットし、とても低い温度で乾燥させ、それからきめ細かい粉になるまで製粉しました。」
と、Arcot准教授は説明します。
「それから非常に穏やかな化学処理で洗浄します。これによって、いわゆるナノセルロースが分離されます。ナノセルロースは多くの場面に応用できる、価値ある物質です。我々が大いに興味を持った応用方法は包装に活用するというもので、特に、最終処理が埋め立てとなる使い捨て食品包装材に注目しました。」
加工を終えると、その材料はまるでベーキングペーパーのようでした。Arcot准教授は、意図する厚さによって様々な種類の食品包装に応用できると話しています。
「いろいろな選択肢があります。たとえば、ショッピングバッグを作ることもできますし、作り方によっては魚や肉などのトレーに使うこともできます。この素材は完全に毒性がなく、生分解性でリサイクル可能です。」
二人はこの素材が生分解性を示すかを実験するために、薄いシートを土の中に6ヶ月おきました。その結果、十分な生分解性を示すことが分かりました。
「この素材はリサイクル可能でもあります。博士課程の学生が、性質に手を加えること無く3回リサイクルできることを証明しています。」
と、Arcot准教授は言います。
食品を実際に素材にのせてテストしたところ、コンタミネーションのリスクもないことが分かりました。安全に使用できて環境に優しい、まさに今の社会に必要な素材と言えるでしょう。実用化に期待です。

 

 

ちょこっと英単語:

discard 捨てる 捨てるものを出さないのが最も良い選択肢である。でてしまったら、すぐ捨てよう。
textile 繊維・織物 機織り機が動いている様子を見ると非常に感動する。