※ちょっと変わった試みをしています。
これは、群についての話である。
一口に群と言っても、それはそれはいろいろな性質がある。
ここでは、部分群について考えてみよう。
群は、いつでも部分群を持つ。自分自身や、単位元からなる自明なものだ。
しかし、「真部分群」といって自明でないものを取ることができるときもあるのだ。
ところで、「指数」という概念はご存知だろうか。これはまあ、剰余集合の濃度だ。
真部分群で、その指数が有限。そんな状況が実現されることも、考えられる。
実はこのとき、群は指数有限の真の正規部分群を持つことが知られている。
これについて見てみよう。
指数が有限である。これは、剰余集合が有限個の元からなるということである。
では、この集合から、それ自身への全単射を考えてみよう。もし、集合の元に番号をつけてみたならば、全単射で移すと、番号が付け替えられる。例えば、1番目のやつが5番目に。3番目のやつが2番目に、と言った具合に。全単射なので漏れも不足もなく、それでいて同じ集合に帰ってくるから、こういうことになる。そして、考えている剰余集合からそれ自身への全単射、このすべての集まりを考える。これに演算を入れよう。そう、写像の合成である。合成しても、並べ替えは並べ替えだ。これはいわゆる、「対称群」というやつになる。有限個の元を並び替える対称群なので、これも有限濃度だ。
上のような、全単射全体の集合は、有限濃度の群になることが分かった。もともと知りたいことは、群が指数有限の真の正規部分群を持つかということだった。指数有限の正規部分群ということは、それによる剰余群が有限になるということか。もし、その正規部分群が何かしらの準同型の核だったら、準同型定理から、その準同型の像も有限だな。そういえば、我々は有限濃度の群をすでに見つけている。と、ちょっとわざとらしいことを言ったが、実は例の全単射の集合を終域にする準同型で、その核が真の正規部分群になるようなものがあるのだ。これを見ていこう。
あまり記号は使いたくなかったが、流石にきつい。
群をG, 例の全単射全体の集合をSと書こう。GからSへの準同型をつくる。今考えているGの部分群をHとすると、Sの元はgHに作用して、それを別の何か、例えばg'Hに変える。ここでgとかg'っていうのはGの元だ。このSの元というのは、Gのなんらかの要素aを代表元gにかけて、gHをagHにするというので実現できる。実際、このかけるという操作はG/HからG/Hへの全単射になっている。G/Hの2つの元gHとg'Hに対して、agH=ag'Hとなるならば、それはgH=g'Hを意味するだろう。つまり単射だ。そしてG/Hの濃度は有限なので。全単射になっていることがわかろう。よって、Gの元aを、「gHをagHにする操作」(この操作はSに属する)に対応させる写像を考える。そして、これは準同型になる。実際、gHをabgHにするのと、bgHにしてからabgHにするというのは同じ変換を引き起こす。
さて、この準同型の核を考えよう。準同型の核というのは、自動的に正規部分群であったな。真の正規部分群かというのが気になるところだが、心配はいらない。実は、もしaがHに入っていなければ、aHはもちろんHではなくなるので、この操作は恒等射ではありえない。今考えている準同型の終域は全単射の集合なので、その中の単位元である恒等射に写らないということは、aは核に属さないということなのだ。だから、真の正規部分群となる。そして前に言ったように、準同型定理から、G/(核)は像と同型で、像はSに内包される。Sは有限の対称群で、像の濃度も有限であることがわかる。つまり、この正規部分群が指数有限であることがわかる。
おっと、もうこんな時間か。今日はこのくらいにしておこう。