一つの認識描像

冷やし中華雑考

冷やし中華.何がか?何って,そりゃあれでしょ.中華麺といろんな具材の,冷えてて美味しいやつでしょ.

どうやらこの世界には,冷やし中華という料理があるらしい.それにしてもすごい名前である.皮肉に使えそうだと思うのは,私の心が汚れているからであろう.
さて,冷やし中華の最大の特徴は冷えている点であろう.冷やし中華が冷えていなかったら,それはただの中華である.なんだこれは.しかし,どれほどまでに冷えているのか?あまりにも,例えば氷点下程度まで冷やしてしまうと,スープや具材などが凍ってしまう.これでは,まともな料理として提供できない可能性がある.なので,冷やし中華の冷え方には下限が存在する.ただよく考えてみれば,スープは何らかの溶質が溶けているはずなので凝固点降下が起きていて,シャリシャリのトマトやきゅうりを添えていると思えば案外行けるかも知れない.凍えさせ中華の誕生である.
夏に定番の食べ物といえば,例えばその概念が温度依存するものでいうとかき氷とかアイスクリームなどがある.しかし,これはどちらかというと物理的な状態が変化してしまうというものである.冷やし中華は温めても物理的状態は変化しないが,その概念特性上冷やし中華でなくなってしまうという特異な性質を持つ.その上,冷麺と違って温かい冷やし中華には名前がないように思う.もしも具材が麺のみの限界冷やし中華なら,温めればただの中華麺として提供可能かも知れない.しかし,通常の中華麺には冷やし中華に見られるような特徴的な具材が入っていないように思える.よって,実は冷やし中華というのはその温度の他にも具材が特徴的であり,他の温度依存料理概念とは一線を画す存在であると言えよう.

視点を変えてみよう.なぜ,冷やし中華なのか.通常の中華に比べて,相対的に特筆に値するほど冷たいからであろう.よって,世界中の中華麺が端から冷たければ,冷やし中華という概念はこの世界には存在しなかったはずである.しかし,我々が言う冷やし中華なる料理は存在していそうだ.
なぜ,中華麺は温度が高いのか.麺を茹でるために熱湯を要するからか,単に温かい食べ物が好まれたからか,私には分からない.ただ仮に前者であるとすれば,この世界の物理法則が異なっており麺が茹でる温度という制約から本質的に開放されていたとき,次の2つのうちどちらかが起きた可能性が高い:
1. 普通の中華麺が「冷やし中華」に対して「温中華」となり,名称に温かいことを強調する表現が加えられる.中華麺はその包括概念となる.
2. 特に中華麺は温度で呼び方を区別されず,「冷やし中華」という概念はなくなる.
つまり,冷やし中華という概念は宇宙が作ったと言っても過言ではある.

さて,温かいか冷えているか,その判断は多くの場合には相対的なものであろう.夏は暑い.だから,冷やし中華は夏の気温に対して冷えている.大抵の場合は,冷やし中華は気温に対して冷えていそうなものだ.では,これを冥王星に持っていこう.冥王星の表面温度は,約-200℃とも言われる.冷やし中華は,灼熱である.ここに(外気温にさらされるため一次的ではあるが)「灼熱の冷やし中華」の誕生を見る.さらに時間を置くと,「冷えた灼熱の冷やし中華」が出来上がる.これを外気温よりも冷やすと,「冷やし冷えた灼熱の冷やし中華」が出来上がる.これでおおよそ-210 ~ -220℃くらいであろう.これを更に,ブーメラン星雲に持っていこう.この星雲の温度は-272℃と言われている.冷やし冷えた灼熱の冷やし中華は,とても熱い.ここからさらに冷めることを考えれば,「冷えた熱々冷やし冷えた灼熱の冷やし中華」くらいまでいけるかもしれない.これ以上冷やしても1Kくらいしか下がらないので,もはや冷やしとは言えない.実は,結構見切り発車で冥王星まで来てしまった感があるので,慎重に行けばもっと増やせそうである.皆さんの挑戦を期待する.

それにしてもまたゴミのような文章を書いてしまった.もし筆者に冷やし中華を奢ってくれる方がいたら,以下からお願いしたい.

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