一つの認識描像

くしゃみを我慢する

ちょっとお出かけ,外に出る.ちょっと歩いて,鼻が出る.すすれど止まらぬ鼻が出る.それでも今は外だから,できればくしゃみはしたくない.お家に帰るときまでは,耐えてみせようくしゃみの衝動.

くしゃみの衝動は,強い.思わずくしゃみをしてしまう.しかし,絶対に抗えない訳では無い.まずは,くしゃみをしたいときのムズムズを良く観察する.ああ,不快!!しかしこの不快に,最大限に集中してみる.感覚が強いほど,分かることも多い.その不快感を調べようという好奇心で,むしろ不快を歓迎する.
このとき心は引き締まっていて,強い.この強さは体にも現れ,全身に力が入る.見たいときに見たいものが見れて,知りたいときにすぐ調べられる今の時代だけど,グッと心身を引き締めて我慢してみるのはとても良い.くしゃみの衝動へ宣戦布告するのは,弱い自分を観察することにつながる.
さて,そうはいっても根性だけではくしゃみは止まらない.最終的には気合が必要だが,ちょっとくらいは論理的に策を講じる.くしゃみとは,勢いよく鼻から息を吐くことだ.つまり,呼吸のプロセスに介入すれば良い.幸い,最近息を止めることには慣れている.完全に止める必要はないが,絶対にくしゃみ用の息を吸わない.気を緩めると,吸ってしまう.吸ってしまえばおしまいだ.だから,イメージとしては「肺を固める」という感じ.肺を膨らませるための全ての筋肉に集中して,なるだけ硬直させる.ここから先は,気合.理論は大事だが,実践と両輪.実践にはたいてい気合が必要だ.

歩く.くしゃみの衝動が存在するか常に注意する.意識で鼻をにらみつける.ちょっとでもその気があれば,肺を石のように固く硬直させる.呼吸は最低限にして,力を入れ,耐える.これを繰り返すと,とても疲れる.体が疲弊して,弱ってくるのが分かる.ああ,もう無理だと緩めてしまうと,おしまいだ.今までの精算と言わんばかりに盛大なくしゃみをこの世界に知らしめることになるだろう.そう,その体の弱みを認識してこそ!それでもなお,依然として強く!家に帰ったら・・・なども考えてはならない.この永遠の苦しみの中に存在できるか?やってやろうじゃないか!!絶対に負けはしない.苦痛は更に私を強くする.

こうしてついに,私はスーパーまで行って買い物して帰ってくるまでの間,くしゃみを我慢し続けることに成功した.あーティッシュティッシュ