一つの認識描像

イネ科の何かを食べようとして完全敗北した話

イネ科の何か

外から持って帰りました.子供の頃こんなことしてたら100%親に捨ててこいと言われたでしょうが,そんなことがないのが一人暮らしの良いところです.手持ちの植物図鑑で同定を試みるも,なんというかよくわからない.チカラシバっぽくはあるか・・・?まあイネ科なので,どこぞのキンポウゲ科などと違って良心的だろうし,最悪食べて体調崩しても圧倒的な認識の技術で耐えるので大丈夫という考えのもと,食べることを決意.

ひとつ籾殻(?)を取って粒状の種子を取り出し,食べてみました.「うん,穀物」って感じの味がします.少なくとも猫じゃらしより美味しい.猫じゃらしより種が大きい.私は普段から一日一食(300円)で,ちょうど一番前回の食事から時間が空いていたということもあり,割と美味しく感じました.表現が難しいですが・・・猫じゃらしは味のないゴマみたいな感じなのに対し,こっちは味があるような気がする大きいゴマみたいな感じです.雑草の中でもイネ科はやはり,安定した美味しさがあります.私は以前,ヨモギをちょっと湯通しして食べたことがあるのですが,ヨモギの裏に生えてる小さい毛たち(白く見える原因)が噛めば噛むほどモチャモチャと絡まっていき,昔から嚥下が悪いのもあって永遠に雑草の味を噛みしめることになるという絶望的な経験をしたことがあります.ちなみにヨモギは天ぷらにすると極上です.まあ天ぷらは王道ですね.ノゲシ系,タンポポなどの葉は無難に美味しいです.私はよくオニノゲシの葉を食べてました.あれはトゲトゲしてますが,アク抜きのために茹でてる間にトゲがしなしなになり,普通に食べられるようになります.個人的には一番食べるのが好きな雑草です.ハコベもオランダミミナグサも食べましたが,まあオニノゲシですね.

さて,ちょっと話が脱線しすぎましたがいよいよ脱穀タイムです.・・・脱穀ってどうするんだ?とりあえずちまちま剥きながら,どうしたものかと考えます.私は農家の孫で,時期になると田植えを手伝ったりしていました.しかし,脱穀は未経験です.最近はすべて機械がやってくれるので・・・.
原始時代の人々はどうやっていたのだろう,石でできたすり鉢に入れて棒でするのか?本当にそれでうまくいくのか?そもそもうちにはすり鉢はないし・・・学生実験で超伝導体を作るときに使ったことはあるけど・・・.うーん,とりあえず水に漬けてみるか?いや,これ別に取れやすくなってないな.割り箸で上から叩いてみるか?うーん微妙.このまま食べても籾の長い毛が口の中に不快感を生み出すのは目に見えてる.いや待て,この毛さえ食べれるようにすればよいのでは?
今までの経験から,大抵こういうのは揚げればパリパリになるということを知っています.なので,揚げ焼きのようにして毛を可食状態へ持っていけば,あとは気合で食えるのではないかと考えました.しかしこの作戦は,大敗北に終わります.

実際に熱してみると,ちょっと時間が立つとパチパチと弾けているのが分かります.きっと中の水分が爆発していたのだろうと思います.そしてある程度で加熱をやめ,ちょっと冷ましてから口に入れました.・・・.あ,これだめだ.純粋に毛じゃなくて籾殻が硬すぎて食えない.いや,そりゃそう.一体何の勝算があったのか・・・.
事前に向いていた種の方は,ポリポリ食感でとても美味しくなっていました.しかし,流石に脱穀ができないのでこれ以上は厳しいと思い諦めかけましたが・・・.よく見てみると,何やらポップコーンのように種が弾けて割れ,中から白い構造物が見える種子を発見しました(そのまま食べてしまったので写真はありません,申し訳ないです).これが見間違いかはわかりませんが,そんなことあるのかと思って私に再度モチベーションを与えてくれました.なので,できるところまで手で剥いてみることにしました.

チマチマ剥いて,種を取る.気づけば種を家に持って帰ってから既に一時間以上が経過しています.そして種をフライパンに乗せ,弾けるまで待つ・・・.待つ・・・.以下がその集大成です.

????????

全く弾けない!!!なんでだ!!

というわけで,炭の塊が誕生しました.こんにちは.
食べてみると,食感の良い炭です.不可逆な反応なので,私の完全敗北となりました.これはなんというか,本当に酷い.

今回の経験で学んだことはたくさんあります.まず脱穀はものすごく大変で,ちょっとそこらへんに買い物に行くだけで食にありつけることの有り難みを確認できました.また,安直な計画は実行しないのが吉ということ.世界はそんなに甘くありません.そして何と言っても,やっぱり自然と触れ合うのは楽しいということ.・・・触れ合ってる?まあそこの審議は良いとして,こういうのは穏やかな楽しさがあります.まあ言葉にするとこんなものですが,結局言葉というのは認識の射影に過ぎないため,実際に経験するのとは非常に大きな隔たりがあります.いやーそれにしてもいつかリベンジしたいですね.もし効率の良い脱穀手法を見つければ,食費が浮く・・・!