一つの認識描像

ただじっとしていて可愛いだけではない植物の魅力

植物と聞くと、特定の場所に根を張り、日光を浴びて静かに育つというイメージを持っているかもしれません。もちろん、それは我々から見れば正しいのですが、実は植物たちは他の植物や虫とコミュニケーションをとっています。ただ自動的に育っていくのではなく、生物として能動的な振る舞いを示すのです。これを知ると、植物の可愛さ、賢さ、逞しさをより感じられるようになると思います。それでは、早速見ていきましょう。

1. 仲間に危険を知らせる

植物はある場所に根付いた後、場所を移動することが出来ません。そのため、外敵からすたこらさっさと逃げることが出来ないのです。では、どのようにして外敵から身を守っているのでしょうか。その手法の一つに、HIPVsというものがあります。これはHerbivore-Induced  Plants Volatilesの略で、直訳すると「草食によって誘発される、植物からでる揮発性の物質」というもので、日本語では「植食者誘発性植物揮発性物質」という名前です。つまり、植物はその葉などを食べられたときに、何らかの化学物質を放出します。それは空気を漂い、他の植物の下にたどり着きます。すると「あ、近くで葉を食べられた子がいる!備えなきゃ!」という風にして、害虫に対抗する化学物質の生成を促進します。このように、植物は仲間同士で助け合って生きているのです。

2. 助けを呼ぶ

実はこのHIPVs、植物同士のコミュニケーションに限った話ではなく、植物から虫へのSOSとしての機能も果たすことがあります。どういうことかというと、今自分を食べている害虫の天敵を呼ぶことが出来るのです。自分が食べられている状況を理解すると、植物はその害虫の天敵を呼ぶための化学物質をブレンドして放出します。このブレンドの仕方が害虫の種類によって異なるそうで、的確に天敵を呼ぶことが出来るのです。

3. まとめ

このように、植物は周り仲間とコミュニケーションをとりながら賢く生きています。今回は空中に放出される物質に焦点を当てましたが、実は地中でもコミュニケーションが行われていて、その化学物質は非常に多様です。いつかこれら化学物質とメッセージの対応関係を詳しく理解できるようになれば、植物の言葉を翻訳する装置が作れるかもしれませんね。それにしても、道端の植物がこのように活発な活動を行っているというのは驚きです。知識が増えると、世界の見方が異なってより人生が豊かになると感じます。植物図鑑を持ち歩きながら公園や山道を歩くと、目に入るそれぞれの植物が特別なものに見えてとても面白いのでぜひ試してみてください。

参考文献:

https://www.nature.com/articles/npre.2007.1429.1.pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpestics/28/3/28_354/_pdf