一つの認識描像

SN 2006gy超新星における研究でわかった、超高光度超新星の仕組み

スウェーデンと日本の科学者らは、「SN2006gy」というこれまで観測された中で最も明るい超新星における、特有の輝線を説明する理論を、10年かけて発見しました。
超高光度超新星は宇宙で最も明るい爆発です。SN 2006gyは最も研究された超高光度超新星の一つですが、その起源ははっきりしていませんでした。今回、ストックホルム大学の天文物理学者と日本の共同研究者らは、スペクトル解析によってSN 2006gyに大量の鉄が含まれていることを発見しました。その量は非常に多く、これまで天文物理学で扱ってきた他のどの対象よりも多いことが分かっています。そして、このことが超高光度超新星誕生の仕組みの説明につながるのです。

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SN 2006gyの写真。(Credit: Fox et al 2015)




「普通の鉄、つまりすべての電子が保持されている鉄と、SN 2006gyの謎の輝線のスペクトラムを比較するということをした人はだれもいませんでした。なぜなら、鉄は普通はイオン化されているからです。我々はそれを試し、観測されたスペクトラムとちょうど同じように輝線が並ぶ様子を見て興奮しました。」
ストックホルム大学のAnders Jerkstrand氏は言います。
「この輝線が現れるために、少なくとも太陽質量の三分の一といった大量の鉄が必要になることが分かったときは、さらに一層興奮しました。これによって、いままでのシナリオは直接的に除外され、新しい理論の発見に至ったのです。」
新しいモデルによると、SN 2006gyの先祖は連星であったとされています。その連星は、片方の星は地球サイズの白色矮星で、もう一方は太陽系ほど巨大で水素が豊富に含まれている恒星で構成されています。それらは非常に近い軌道を回っていました。恒星が水素を使っていくにつれて膨張し、白色矮星は飲み込まれます。すると、白色矮星は螺旋を描きながら恒星の中心に向かっていき、ついに到達すると、いわゆるla型の超新星が誕生します。Anders Jerkstrand氏は次のように言います。
「SN 2006gyの裏側にla型の超新星が見えてきたことは、これまでの研究者の常識をひっくり返すようなものです。白色矮星があれだけ近い軌道を周り、急速に中心に落ちて爆発することは、連星の時間変化と白色矮星が爆発するための必要条件に関する理論に新しい重要な情報を与えてくれます。」

 

 

 

ちょこっと英単語:

Superluminous supernovae 超高光度超新星 超新星爆発はほんとうに眩しい。見たこと無いけど。
progenitor 先祖 ここでは、超新星に変化する前の姿という意味で書かれている

 

 

 


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