地球が生まれたときの環境というのは、めちゃくちゃなものでした。隕石や、雷などが地球の表面に容赦なく落ち、生命が存在しうるような場所とは到底言えないような状況でした。こんな状況のなかで、どのようにして生命が誕生したのかは何十億年もの年齢を持つ謎と言えます。今回の新しい研究では、生命の構成要素が初めて環境に適合したのが、いままで考えられてきたよりもずっと厳しい環境での出来事だったことを示す証拠が見つかりました。
生命は、遺伝子であるRNAとDNA、さらにタンパク質という、3つの要素が主体となって構成されています。長い時間を得て遺伝子が複製され、生命は形を変えて、自然選択的に多様な種が生き残ったとされています。
しかし、一番はじめのRNA、またはDNAやタンパク質は、それ単体で構成される必要があります。これが何故問題なのかというと、現在体の中で行われている遺伝物質の合成は、タンパク質でできた触媒(酵素)が重要な役割を果たしていて、その触媒を作るためにはDNAの遺伝情報が必要だからです。現在の一般的な仮説としては、「RNAワールド」という説が有力です。これは、RNAがDNAとは違って自己複製できることから、はじめはRNAだらけの世界であったという説です。原始地球には、RNAの塩基を構成する化学物質があったとされているものの、一部の科学者はRNAを合成するプロセスはそんなに単純なものではないと考えています。
「数年前、リボヌクレオチドの純粋な集合が原始地球に存在していたという単純な考え方は、Leslie Orgelから『分子生物学者の夢だ』として笑われました。しかし、合成前の様々な物質が不均一に存在していた状況から、どのようにして、今日のような比較的均一なRNAが発現したのかというのはよく知られていませんでした。」
とJack Szostak教授は説明します。
Szostak教授と共同研究者らは、RNAの発現に関する新しいモデルを発表しました。単純な反応ではなく、ANA、DNA、RNAといった類似した化学物質によって、ヌクレオチドの混合物からRNAが成長してでてきたという、複雑なモデルです。
灼熱の原始地球で、完全なRNAが自然に作られるとは考えにくいものです。それよりも、色んな種類のヌクレオチドが融合して、RNAとDNAの両方を含むような中途半端なものや、ANAのようなほとんどが遺伝情報に使えないものが合成される可能性のほうが遥かに高いです。これらが、今日のRNAの最初のステップになったかもしれません。
「現在の生物は遺伝子情報をエンコードするのに、比較的均一な材料を用いています。」
とSeohyun Kim氏は言います。では、この説が正しければ、遺伝分子の継ぎ接ぎのような物質からどのようにして均一なRNAに進化したのでしょうか。
Kim氏は、原始の不均一なRNAを、RNAの複製プロセスで人為的にコピーするという実験を行いました。もちろん、純粋なRNAのほうが複製の精度や速度は良いという結果が出ました。しかし、ANAやDNAといった物質が、RNAの自己複製能力を向上させる手助けをしていたことが分かりました。Kim氏は言います。
「興味深いことに、これらの変異体ヌクレオチドの中には、RNAの複製に関して有益なものも含まれていたのです。」。
もし、初期のRNAが他の遺伝物質より効率的に複製されていったなら、RNAの数が他の遺伝物質の数を上回ることになります。これは実際に原始スープのなかで起こったことで、ハイブリッド(遺伝物質の複合体)が現在のRNAやDNAに成長していき、ついには数で上回りました。Szostak教授は次のように言います。
「純粋な構成物質の集合など必要なかったのです。RNAの複製における化学反応は、時を経て、より均一なRNAの合成に移り変わります。この理由は、Seohyunがはっきりと示したように、異なる種類のヌクレオチドが複製競争をすると、RNAがいつも勝利してしまうからです。そして、RNAだけが合成されていくのです。」
これまでのところ、研究チームは初期地球のヌクレオチド変異体のほんの一部しかテストしていません。研究は始まったばかりなのです。
ちょこっと英単語:
mayhem 騒乱 自分の部屋がこんな状態
primordial 原始の 直接に確認できない過去を研究できるのは、よく考えると不思議な気もする