一つの認識描像

なぜ生物は増えようとするの?これがわからない。

最初の生物くんよ。なぜ君は、増えようとしたのかね。僕にはさっぱりわからないよ。

偶然化学物質が集まって、周囲からある程度隔離された、代謝して動く分子マシンができたとしよう。これも理解できない奇跡だが、なぜ君は増えようとしたのかね。そして、増えた君たちももっと増えようとしたのはなぜかね。自分たちが、一族が消えてしまわないように増えるのはなんでですか。いくら考えてもわからない。

生物にとって「増えようとする」というのは最も根源的で重要な性質のうちの一つであると考えられます。もしそうでなければ、奇跡的に生物が生まれたとしてもその一個体だけで終わってしまうからです。なので、我々の祖先とならなかった「生物」は原始地球にもっと多様な形で存在していたかもしれませんが、それは増えなければただの複雑分子マシンです。しかし、どうして増えようと思ったのでしょうか。この「意思」ともとれる何かは、どのように発生したのでしょうか。

増えようとする性質を持つとはどういうことでしょうか。最初の生物は無性生殖ですから、分裂して増えます。分裂するためにはエネルギーが必要ですし、物質も必要です。こんなに頑張って増えるというのは、いったい何のメリットがあるのでしょうか。これを考えるために、分裂しない場合を考えてみましょう。

分裂しない場合は、分裂に使うはずのエネルギーを生きていくために使えるので、こちらのほうが生き残るためには効率が良いように思えます。しかし、急激な環境の変化などで死んでしまうと、もう何も残りません。これは困ります。

そこで分裂をしておくと、自分の一部がほかのどこかで生き残る可能性が出てくるため、膨大なエネルギーをかけてでも「増えることができるなら増える」性質を持ったやつが生き残る可能性が高くなります。分裂後の細胞たちを「自分」と考えると、自分が散らばることによって生き延びる、すなわち寿命を延ばすという風に捉えることもできます。このように考えると、「増えようとする」とは「長く生きようとする」というモチベーションなのかもしれません。

じゃあなんで、長生きしようと思ったんですか。いや、それとも「自分を保とうとする」、「増えようとする」、「よく動く」という性質を偶然持った分子マシンなら生物っぽくなるのか。にしても、こんなものよく偶然生まれたなあ。