一つの認識描像

分子の檻で有害物質をキャッチ!さらにそれを利用する技術とは

光化学スモッグPM2.5などの環境汚染物質は怖いですよね。環境を破壊してしまうことは、我々の生活はもちろん、自然界のバランスの破壊にもつながってしまいます。最近は科学技術が進歩して、大気中に有害物質を出さないような仕組みが発展しつつあります。今回は、発電所や工場、車などから排出される有害物質、二酸化硫黄を取り除く研究を紹介します。

1.有害な二酸化硫黄を捕まえる小さな檻

石炭を燃やしたりすると発生する二酸化硫黄。発展途上国ではかなり問題視されている所も多いようです。しかし、硫黄化合物を用いて有用な化学製品を作ることもできます。実は、ワインの酸化防止剤には二酸化硫黄が使われているのです。他にも、硫酸は工業にて非常に重要な酸として知られています。このような、有害だけど有用な物質を大気中から分離してうまく利用できたらいいのに・・・、と思いますよね?

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二酸化硫黄のイメージ図

今回、科学者らの国際的な共同研究により、環境から二酸化硫黄を選択的に吸着することができる多孔質が発見されました。「環境から」と書いたのは、大気中だけでなく、水中でも効果があることが分かったからです。この化合物はまるで「檻のような」、銅を含む分子で構成されていて、molecular organic frameworks(MOFs)として知られているものです。この分子は多孔質を形成し、従来の二酸化硫黄吸着システムよりも効率が良いとのことです。

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金属多孔質の一例

2.ただ吸着するだけじゃない!捕まえた二酸化硫黄はどうするの?

これまでの説明だと、効率の良い二酸化硫黄吸着物質が見つかった、だけで終わってしまいます(これでも十分すごいですけどね)が、実は、捕まえた二酸化硫黄を放出する事もできるのです。そもそも、この物質は高温状態でよく二酸化硫黄を吸着します。そして、常温になると吸着作用は可逆的になります。つまり、常温では濃度の低い空気中に二酸化硫黄を放出するのです。これによって大気中、または水中で高温にして二酸化硫黄を吸着した後、常温の回収装置の中で二酸化硫黄を放出して回収することができるのです。回収された二酸化硫黄は工業に利用できるという、実に無駄のない仕組みになっています。

人間の活動も環境の保護も同時に実現する、持続可能な社会を作っていくための大きな鍵となりそうですね。

 

 

ちょこっと英単語:

elevated temperatures 高温 high temperatureの代わりに使えるとかっこいいかも

porous 多孔質 pore+ousという構成でporeが小さい穴、ousがたくさんあるといったイメージ