一つの認識描像

ガラスが曲がる?レーザー光を照射して作られた新たなガラスとは?

私達の身の回りにはガラスが溢れています。コップやワイングラスにも使われますし、建築物にも多く使用されます。ガラスは透明で固く、そしてとても脆い物質です。床にコップを落として、パリンッ!と割ってしまったことのある方も多いのではないでしょうか。「もしガラスに伸縮性があって割れにくかったら・・・。」と思っている方、そんなあなたに朗報です。イエナ大学などによる国際的な研究によって、曲げることが出来るガラスを作る方法が発見されました!一体どのようにして作ることが出来るのでしょうか?

f:id:watarikui:20191120164111j:plain

割れたグラス。一度割れるともとには戻らない。

アルミニウム酸化物にレーザー光を照射!新しいガラスの性質とは?

そもそも、ガラスはどのような物質からできているのでしょうか?ガラスの主な材料は、ケイ素と酸素です。更にいうと、これらが結合した二酸化ケイ素などの化合物が、結晶構造とは言えない不規則な構造(アモルファス)をとっています。ガラスが透明である理由は、ガラスの中の電子と光子が相互作用しないためです。もし、材料の原子が持っている電子と光子が相互作用すると、それによって光が十分透過しなくなり、透明ではなくなります。今回の研究では、研究者らは小さいガラスのサンプルを作るために、従来型のガラスで使われている砂から取り出される材料ではなく、酸化アルミニウムの結晶を使用しました。この実現のために、非常に高エネルギーのレーザー光を照射し、サンプルを紫色のプラズマにまで変化させました。そこまで熱した後、冷却基盤の上で冷却されていきました。

f:id:watarikui:20191120163854j:plain

酸化アルミニウムに高エネルギーレーザー光を照射している様子(Credit: Erkka Frankberg)

出来上がった素材のテストでは、それが透明で、従来のガラスよりも割れにくいことが分かりました。この素材でできたシートは曲げることもでき、引き伸ばすこともできたといいます。もとの長さの8%までの引き伸ばしと、半分の長さまでの圧縮が確認できたと報告されています。研究者らはまた、その曲げられるガラスを電子顕微鏡を用いて詳細に調べました。そこで分かったことをもとにして、性質のより良い理解のためにコンピューターシミュレーションを作成しました。そのモデルは、新しいガラスの原子が欠陥もなくぎっしりと詰め込まれたネットワークを構成しており、それによって曲げることが出来るようになっています。このガラスを構成する原子は、圧力を受けると場所を入れ替わることができます。

このガラスが実用化されれば、コップが割れることはなくなりますし、スマートフォンの画面にヒビが入ることもなくなります。強盗がガラスの窓を割るのも難しくなっていいことだらけですね。これからの研究では、より大きなシートを作ることが出来るのか、製造を簡単にできるのかを明らかにする必要があります。実用化の日が待ち遠しいですね。

 

ちょこっと英単語:

brittle もろい 固くて脆い。イオン結合に見られる性質でもある。

ductile 延性 金の延性は非常に高い