一つの認識描像

プルトニウムの安定した状態!?世界の科学者が驚いた研究結果とは

原子力発電所で使われるウランは、その後プルトニウムに変わり、核廃棄物となります。プルトニウム半減期は非常に長く、なにもしなければ廃棄物がどんどん溜まっていくばかり。しかし、そんな状況に一石を投じる研究結果が出ました。なんと、プルトニウムの安定した固体状態が新しく発見されたのです!今回は、この研究について見ていきましょう。

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Credit: CC0 Public Domain

1.最新の実験で見つかった、奇妙な現象とは

今回の研究は、the Helmholtz Zentrum Dresden-Rossendorf(HZDR)率いる、国際的な研究チームによるものです。プルトニウムは核廃棄物として知られ、環境を汚染してしまいます。そこで、さまざまなプルトニウムの化合物を合成しながら、それらが自然環境に近い条件下でどのような性質を示すのかが調べられました。ここでは高度なシンクロトロンX線法を用いた実験と、理論的研究が両方とも行われました。すると、実験チームの方で、間違ったように見えるほど奇妙な現象が発見されたのです。このチームは、様々な前駆体を用いてプルトニウムの二酸化物を作る研究をしていました。Pu(Ⅵ)という6価プルトニウムの前駆体を用いて実験したところ、何やらおかしな反応が検出されたのです。研究に携わったKvashninaによると、Pu(Ⅲ)や(Ⅳ)、(Ⅴ)のときには反応は一瞬で終わってしまうとのこと。その後の高エネルギー実験などから、この現象はPu(Ⅴ)、つまり、5価のプルトニウムの安定性を示すものだと結論しました。

2.実験結果に驚き!理論分野にも影響が

これは相当にビックリなことで、モスクワ州立大学の化学チームは、最初にこのデータを見たとき、「Pu(Ⅴ)の安定した状態だって!ーいや、それは不可能だ、そんなものは存在しない。合成が間違っていたに違いない。」と言ったそうです。しかし、3ヶ月後にもう一度実験が行われ、長期の安定性が実証されることとなりました。この発見によって、理論的な予測しかできなかったプルトニウムの挙動に、実測的なデータを考慮することができるようになります。核廃棄物の安定化が実用的になれば、廃棄物問題も解決するかもしれませんね。

 

 

ちょこっと英単語:

compound 化合物 科学系の雑誌や論文を読みたいなら、絶対に抑えておきたい単語

precursor 前駆体 前駆体という概念は生物にもよく出てくるので知っていると良いかも