一つの認識描像

氷に閉じ込められた泡から過去を覗く!太古の地球の気候変動に関する研究

温室効果ガスである二酸化炭素。これを取り除こうという動きが世界中で起こっています。二酸化炭素は気候変動の一因ではないかと考えられ、二酸化炭素濃度を減らすための技術も開発されてきています。しかし、二酸化炭素濃度と気候変動の関係は過去の地球においても見られたのでしょうか?今回は、200万年前の氷に閉じ込められた「200万年前の大気」からその疑問に答える研究を紹介します。

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南極。日本の基地もいくつかある。(from: kachimai.jp)

1.特殊な氷河期のサイクル!これまでにわかったことと、発見された謎

今回の研究は、プリンストン大学のJohn Higgins氏, Yuzhen Yan氏、メイン大学のAndrei Kurbator氏率いる研究チームによるものです。これまでにも、氷に閉じ込められた大気を解析して、太古の地球の気候状態を特定するという研究は行われてきました。しかし、その試料は最も古いもので80万年前のものです。この試料などによって、大気中の二酸化炭素濃度が南極と地球全体の温度上昇に、過去80万年にわたって直接的な関係を持っていた事が分かりました。さらに、二酸化炭素濃度と気温の関係について詳しく調べると、二酸化炭素濃度が高い時期と温暖期が一致したことが分かりました。しかし、低二酸化炭素濃度が氷河期に繋がるという結果は得られませんでした。さらに別の研究からは、過去100万年間にわたって氷河期のサイクルが10万年周期で起こっていながら、280万年前から120万年前の間においてはこのサイクルは比較的短く、4万年周期だったということが分かっています。この時期の氷河期はさほど珍しいものではなかったと言えるでしょう。この時期の試料を採取する事ができれば、より多くの氷河期に対するデータを入手することができます。

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水中の泡。この状態で凍ると、なかに空気が閉じ込められ、タイムカプセルの役割を果たす。

2.はっきりと分かった気候変動との関係!さらなる研究も

今回採取された200万年前の氷の試料は、南極大陸のアランヒルズのものです。ここでは、過去には太古の隕石なども見つかっています。より古いデータを得るためにはより地下深い部分にある試料が必要であり、地下200mを1~2週間もかけて掘ったそうです。そして、この試料を氷の化学研究に基づいていて解析したところ、気温変化が南極の二酸化炭素濃度変化と同時期に起きていたことが分かりました。チームメンバーのEd Brook氏(オレゴン州立大学)は次のように言います。

「この研究の最も重要な結果の1つは、280万年前から120万年前の気温が二酸化炭素濃度と関係していると示したことです。これは気候科学の理解と、将来の気候予測モデルを修正する上での重要な基礎となります。」

研究チームは二ヶ月後、またアランヒルズに戻り、今度はより大量の、より年代の古い試料を採取する予定です。Brook氏はさらなる研究に希望を持っています。

「私達は、このエリアがどのくらいまで古いデータを持っているのかの限界がわかっていません。より古い試料もどこかにあるはずです。だからアランヒルズに戻るのです。200万年を超える試料が採れれば、とても素晴らしいことになるでしょう。」

果たして氷のタイムカプセルは、我々に何を教えてくれるのでしょうか。これからの研究に期待です。

 

 

ちょこっと英単語:

antarctica 南極 北極圏はarctic
prior to that それまでは priorが時系列的な「前の」という意味をもつ