一つの認識描像

土星の衛星・タイタンの表面で起こる化学反応が明らかに!黒い砂丘の組成も解明か

皆さんはタイタンという天体を知っていますか?タイタンは土星最大の衛星で、実は表面には液体が存在しています。さらに固体で覆われている天体であるため、地球にそっくりという声もあります。今回はそんなタイタンについての研究を紹介します。

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土星の衛星タイタン。居酒屋の名前にもなっている。

1.衛星に砂丘!?謎の構造を発見

タイタンはこれまでの惑星研究の中でも、私達の宇宙に対する見方を大きく変えてきた天体です。タイタンには大気があるため、天気が存在し、雨が降ったりします。でもそれは水の雨ではなく、なんとメタンの雨なのです。なので、メタンの海、メタンの池なんかも存在します。なんだか不思議ですね。そんなタイタンに、黒くて波模様のある、まるで砂丘のような構造が見つかりました。

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タイタンの「砂丘」。波模様が分かる

この黒い組織の化学的構造は、長い間謎のままで、周辺にアセチレンがあるということしか分かっていませんでした。しかし、W.M.Keck Research Laboratory in Astochemistryの研究者らが、この構造は芳香族化合物によるものではないかという研究結果を発表しました。しかし、そんな複雑なものが本当に合成されるのでしょうか。

2.極低温での化学反応!宇宙線も影響か

これまでの研究では、メタンと窒素が太陽光によって複雑に反応して芳香族ができる可能性が考えられていました。しかし、この反応はかなり条件が揃わないと起きないとされています。そこで、この研究チームは、アセチレンのような多環芳香族と、ベンゼンなどのその前駆体が低温下で宇宙線によって生じることを示しました。実験としては、極低温・低圧の状態を作り出し、そこにアセチレンを電子に曝した状態でおいて、宇宙線に見立てた電子ビームを照射させるというものです。すると、もともとあった電子と照射された電子が共鳴現象を起こし、選択的に分子がイオン化されていきます。そして最終的に、芳香族化合物が生成されるのです。この実験の条件は実際にタイタンの表面で起こりうるもので、アセチレンもタイタンには存在しています。この研究により、タイタンの「砂丘」の成分は芳香族炭化水素であることがわかりました。

3.研究成果の応用は如何に?カイパーベルトの謎も視野に

実はこの「砂丘」、とんでもない量あることが分かっています。なんとその総体積は、タイタンにあるすべての海と池の体積の合計の3~7倍もあるそうです。これだけあると影響は大きく、衛星レベルの気候に影響を及ぼしています。今回化学的構造がはっきりしたことで、この衛星に関する研究はより進展するでしょう。さらに、カイパーベルトにあるマケマケなどの小天体の化学構造の解明にも有用だそうです。小天体は大気がないため、従来の解析法では情報を得にくいという難点がありました。今回発見された理論を用いれば、このような天体のから得られる情報を増やすことができ、構造の解明に一歩近づく事ができるのです。もしかすると、地球に存在している有機化合物の起源も分かるかもしれませんね。

 

 

ちょこっと英単語:

hence したがって 古い表現だが、まだまだ固い文では出会うかも

topography 地形 地学に興味がある人は抑えておきたいかも