まったくもって正しくないことをうまく二つ組み合わせると、全体として正しい分を成立させることもできます。早速例を見てみましょう。
1. 犬は植物である。
2. 「犬」という名前の植物は動物である。
3. よって、犬は動物である。
まず1. ですが、犬はアプリオリに(言葉の定義的に)動物なので、植物ではありません。この文は矛盾しています。次に2. ですが、植物はこれまたアプリオリに動物ではないので、矛盾しています。しかし、この矛盾した二つを組み合わせることによって正しい文章「犬は動物である。」が誕生します。
ここで行われていることは、あえて表現するなら以下のようになっているでしょう。
A≠B, B≠C ならば時々 A=C
Bを主軸としてみれば、AとCには無限の可能性があります。そのなかでごく稀にA=Cが成立してしまうことがあります。上で挙げた例は簡単なものですが、より複雑で曖昧なものだと気づきにくいこともあります。そのうえ、日常での真偽はアポステリオリ(経験的に分かること)なものが多く、そもそも真や偽といった強い言明が成り立たない曖昧なもののほうが多数です。これによって、誤謬を引き起こしてしまう可能性があります。