一つの認識描像

「空間でない」という概念

もしこの世界に空間ではないがあったら、それはどのようなものなのでしょうか。

1. 空間とは何かを考える

周りを見渡してみましょう。そこには、空間が広がっています。また、あなたも空間を持っています。宇宙空間という言葉もあります。この世界は、空間だらけです。あなたは、空間とは何だと思いますか?今自分がいる場所でしょうか。この宇宙全体でしょうか。それとも、物と物の間のことでしょうか。言葉の定義を考えると、最後の言明がしっくりくるように思います。しかし、あなたの顔とスクリーンの間には空気がありますが、この領域も空間と呼べるのではないでしょうか。もっと言うと、いわゆる真空というものは物質で満たされています。場の量子論では、物体は真空からの励起状態であるという描像をとっており、真空は絶えず揺らいで物体の生成消滅を繰り返しています。

もう少し、深く考えましょう。あなたは空間の中に存在しています。この世界が4次元空間であるとすると、あなたは時間軸正の方向に絶えず動き続けています。見方を変えると、一瞬前のあなたが消えて、今のあなたが生成されています。3次元空間に動くときも、同様に考えることが出来ます。腕を動かしてみてください。物質が真空からの励起であるとすると、あなたの腕の性質を示すような励起状態が時空を移動していることになります。励起する場というのは時空全体に連続に張り巡らされているので、あなたの腕の運動を再現するように場の励起が連続して起こります。

このことから、空間というのは「励起が起こりうる場」ということが出来ると思います。我々が空間の中を動けるのは、そこで場の励起が発生して移動を再現できるからです。我々が空間を視認できるのは光があればこそですが、この光ももちろんエネルギー量子です。物と物の間に光が存在する、つまり場が光として励起することが無ければ、それは空間とは言えない、むしろ、空間と認識することは出来ないのではないでしょうか。いや、そんなこともないですね。真っ暗な領域に見えるかもしれません。

2. 空間でないための条件

空間とは、簡単に言えば物質が存在しうる領域といえます。しかし、目の前に全く不可侵の真っ黒な領域があったとしても、我々はそれを空間と呼んでしまうことが出来ます。つまり、空間とは「認識可能な、物と物の間」⊕「物質が存在しうる領域」とすれば良さそうです。では、我々が空間と呼べないものについて考えていきましょう。条件として、1. 物質が存在し得ない、2. 我々が認識できない、というものを考えます。これは、物質が存在しえない領域の境界に小細工を仕掛けることで実現できます。簡単な言い方をすると、その領域を透過してしまえばよいのです。つまり、真の意味で透明な領域です。その空間の中には何も存在できず、外側から励起が進行してきたときは領域の反対側に励起を再現する。これで、空間でない領域の完成です。あらゆるゲージ粒子が透過するので、ゲージ力による検出はできませんし、境界での空間の歪曲も対応する点で接続されるようにすれば重力での検出もできません。

これは意味のないものです。我々は、このような領域の存在を証明することはできません。ただ、空間でない何かを考えてみたかっただけです。もしかしたら、こういう領域がありふれているのかもしれません。ほら、あなたの後ろにも・・・。

私は何をしたかったのだろうか('_')