一つの認識描像

この宇宙の始まりは、実は終わりなのかもしれない

物事には、始まりと終わりがあります。これは我々の感覚に非常によくあった論理です。どんなものにも、それが「無い」状態から「有る」状態への著しいジャンプが存在し、そしてその逆も存在します。宇宙はどうでしょうか。宇宙の始まりは、ビッグバン理論によって説明されています。これは、もしビッグバンがあったら~が観測されるはず、というその~が驚くべき精度で観測されていることに裏付けされた、紛れもない実験的事実です。もしビッグバン理論を否定したければ、それらの観測事実を完全に再現し、かつより多くの事象を説明できる理論を構築する必要があります(これが出来たらノーベル賞!)。

しかし、ビッグバン理論が証明できるのは「宇宙の非常に初期の状態」であり、宇宙そのものの生成ではありません。では、宇宙の生成はどのようにして行われたのでしょうか。本当に何もない宇宙の「外側(???)」のような場所から、突然宇宙が出来たと考えるのはなかなかに理にかないません。「何もない」状態というのは、因果でいう「因」の存在しない状態です。原因が無いのに、「宇宙が生まれた」という結果が存在していることになります。このような事象は、少なくとも我々の論理では理解できないものです。

それでは、「宇宙はずっとある」という立場はどうでしょうか。つまり、宇宙の存在に原因を必要としない立場です。これは、そもそもその立場を納得するのが難しいでしょう。それに、宇宙がずっとあるのならビッグバン理論が宇宙を説明する理由がよくわかりません。しかし、もし「全てのものには原因がある」という考えを持っていてそれが矛盾につながるなら、一度「原因のないものもある」という逆の立場をとってみるのは面白いかもしれません。論理というのは、経験によって形成された帰納的な構造です。我々が現在経験できない部分で、原因のないものが存在しているという可能性は無いわけではありません。

そして、もう一つ奇妙なことを考えてみましょう。タキオンです。タキオンとは、光速以上の速さで動く粒子の事で、この世界に存在しないとされています。この粒子の奇妙な点は、速くなればなるほど、エネルギーが下がるというところにあります。基本的に物理現象はエネルギーの低い状態に進んでいきますので、タキオンが存在すればそれはどんどん加速していくことになります。もし、タキオンが非常に軽微な相互作用を通常の物質と持っていれば、タキオンはその物質からエネルギーを奪っていくことになるでしょう。ある程度相互作用が強いと、その物体を消してしまいます。もう一つ奇妙な点として、タキオンは光より速いので過去に向かって進みます。これによって因果律の破綻が起きるので、通常の物質と一緒に相対論に組み込むことはできません。

それでは、宇宙の話に戻りましょう。宇宙はそもそも存在していたとします。非常に大きな、ただし有限の大きさの宇宙とします。そして、遠い未来に何らかの原因でタキオンが生まれたとします。このタキオンは、負のエネルギーを増大させながら過去に向かって突き進みます。その間、軽微な相互作用によって周りの空間からエネルギーを奪っていきます。もし、エネルギーを奪われた空間が縮んでいくとすると、これを我々(つまり、未来に向かって進んでいる存在)から見れば宇宙の膨張に見えます。そしてタキオンはどんどん負のエネルギーを増し、宇宙はどんどん小さくなり、最後には消えてなくなります。遠い過去に宇宙が消えてなくなるので、それを逆に見れば宇宙が誕生したと捉えらえるのです。

はい、まあ、面白いアイデアかもしれませんが、ツッコミどころが満載です。一個人の妄想ですので、決して真に受けないようお願いします。ただ、視点を変えるとこういう見方もできるよね、というお話でした。