一つの認識描像

水素生産に新たな触媒!商業的な規模も視野に

水素自動車や水素燃料、水素はエネルギーを放出した後の廃棄物として水しか出さないため、非常にクリーンなエネルギー源をして注目を集めています。今回はそんな水素についての研究を紹介します。

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1.そもそも、どうしてそこまで水素にしたいのか

前述の通り、水素は非常にクリーンなエネルギー源です。しかし、水素の生成には水の電気分解をする必要があり、そこに石油で作った電気を使っているのでは元も子もありません。そこで、水素を再生可能エネルギーで作った電気で作ろうという話が上がりました。ここで、え?と思うかもしれません。熱力学第二法則を知っている方なら、エネルギーは変換することにどうしても失われていくことを知っていると思います。なぜそこまでして水素に変換しようとするのでしょうか。これには、環境面以外に大きな一つの利点が挙げられます。それは、貯蔵しておける上に、輸送時のエネルギーロスがないといったものです。貯蔵しておけるのは電気も同じですが、電気だとどうしても少しずつロスしてしまいます。それに比べて水素はあくまで物質なので、高圧にして液体にしてボンベの中に保存しておけばほぼロスすることはありません。輸送の場合にはこの差は顕著で、電線での送電だと、かなりの電力がロスしてしまいます。なので、例えば、砂漠で作った電気をそのまま送るより、水素にして輸送したほうがロスが少なく、効率が良いのです。

2.水素がうまく行っていない理由

このような利点がありながら、なかなか実用化に至れないのはやはりコスト面での障壁が高いからです。水素をそのまま電気分解すると、実用的な量を作るのに莫大な電力を使ってしまって、応用どころではありません。そこで、反応を促進する触媒を使用することで、ある程度生産性を高めることができました。しかし、今度はその触媒がプラチナやイリジウムといった希少で高価な金属で、商業的な運用が難しいという難点がありました。それに、高圧にして保存するのにも一苦労します。最近は水素貯蔵合金が開発されていて、貯蔵・輸送方面は進展があったのですが、水素生成の方はなかなか難しいままで止まっていました。

3.新たな触媒で広がる未来

しかし今回、スタンフォード大学の研究所であるSLACが、商業レベルで実用化できる可能性がある触媒を見つけたと発表しました。この触媒は単に安価な素材で作られているだけでなく、長時間の反応や高圧力、高温の条件下でもしっかり反応してくれるという代物です。おまけに強酸性下でも反応が進みます。触媒は、リン化コバルトを主成分とする物質で、白金などと比べるとありふれた物質と言えます。用いる金属が高価だという理由で止まっていた状況を、ありふれた物質の組み合わせで打破したのは素晴らしいことです。今後は水素がより大規模に生産され、世界中で当たり前に水素が行き来する未来が待っているかもしれません。

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水素電子のイメージ図(画像はイメージです)