一つの認識描像

行間の少ない場の量子論のオススメの教科書!学部一年生でも読める(?)

現在最も熱い物理の研究分野として、「場の量子論」が挙げられます。最先端の素粒子理論(標準理論やひも理論)を理解するためには、場の量子論は欠かせないものになります。しかし、多くの教科書は内容が高度でなかなか進まず、中には1ページに2~3日かけてしまうときもあります。その原因は、教科書の「行間」にあります。「なんかここの式変形わかんないなあ・・・」と思って鉛筆を動かしていると、全然わからなくて泥沼にハマることも多いでしょう。しかし、今回紹介する教科書は違います。

坂本眞人先生の「場の量子論 不変性と自由場を中心にして」です。この本の特徴は、なんといっても行間が非常に少ないことにあります。初学者にとって分かりづらい初めの方は特にそうで、「ここの式変形確かめるか」と思った時には必ずと言っていいほどその式変形が詳細に記述されている注があり、私も何度も助けられました。そもそも、この本は学部生でも読めるように作られたものであるので、量子力学解析力学の基礎と物理数学がある程度わかっていれば読めるようになっています。私はまだ学部一年生ですが、量子力学解析力学を少し独学していたのでこの本を読み進める事ができました。場の量子論は内容も面白く、特に7章のゲージ不変性と作用項の話は感動すること間違いなしです!ぜひ、興味深い場の量子論の世界に、気軽に足を踏み入れて見てください。

下巻も発売されています。

下巻では、実際の観測物理量である散乱断面積をどのようにして場の量子論から求めるかを知ることができます。そのためには自由場を起点とした摂動論が必要であり、摂動論を簡単に計算するためにファインマンダイアグラムが導入されます。ファインマンダイアグラムは(散乱断面積の計算に直接かかわる)n点グリーン関数の計算に使用されます。また、いままで扱ってきた作用は古典的な作用であるため、その量子バージョンである有効作用や、系の真空期待値を決めることができる有効ポテンシャルなどについても学びます。これらの量子補正項を計算すると紫外発散が出てきてしまうので、それを取り除くための繰りこみも扱っています。また、自発的対称性の破れによるNGボソンや、ヒッグス粒子との相互作用による質量の獲得なども解説されているため、興味のある方はぜひこちらも学んでみてください。

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