一つの認識描像

「視野の狭さ」をコンピュータシミュレーションしてみる

1. 簡単に説明

人は、ある考え方や視点に偏ってしまいがちです。一度固まってしまうと、それを否定する考えを受け付けなくなってどんどん固まっていく、なんてこともあります。そこで、得る情報や本人の性格によって、この「認識の偏り」はどのように変化するのかを、簡単にシミュレーションしてみました。なお、私は心理学に関して全くの素人で、あくまでエンターテイメントとしてやっていきますので、その点はご理解ください。

2. 理論の大雑把な説明

最初に、ある考えを持っているとします。私たちは情報を得たり、自分で考えるうちに様々な認識を獲得します。ここでは簡単のために、今の自分の考えを肯定する考え、否定する考え、関与しない考えに出会う割合を、1 : 1 : 8 であるとしてみます。そして、肯定する考えに出会うと信頼度+1, 否定する考えに出会うと信頼度-1 となるようにします。自分の考えに対する信頼度が高いほど、認識が局在していると考えてみます。
基本的なアイデアは上記のとおりですが、確証バイアスの効果を取り入れてみましょう。信頼度が変化する時、10%の確率で確証バイアスが働き、プラス分は増え、マイナス分は減るようにします(具体的にはRを信頼度としたとき、+1を+2-1/(ln(R+1)), -1を-1/R とする)。最初の信頼度をR=10とたとき、時間が経つに連れてどのようにRが変化していくのかを見てみます。いわゆる、トイモデルです。
計算は、Rが1を下回った場合には、そこで打ち切ります。

3. 変化させるパラメタ

上では出会う考えは肯定と否定で 1 : 1 でした。まずはこれでシミュレーションします。次に、1 : 2 にしたものと 2 : 1 にしたものをシミュレーションして比較することで、外部情報や思いつく考えがどのように考えの信頼性に影響するのかを見てみます。
また、比率を 1 : 1 に固定した状態で、今度はその人が自信を持っているか、自信がないのかを変化させます。このためには、自信を持っている人が肯定的な考えを得たときの効果を1.25倍にし、逆に否定的な考えを得たときの効果は0.8倍します。自信がない人は、この逆のことをします。性格や態度が、信頼性にどのように影響するのかを見ます。

4. 結果

まずは、1 : 1 の結果です。自信の効果は取り入れていません。4回分を載せます。

肯定:否定 = 1 : 1, 自信効果なし

確証バイアスの影響で信頼度は向上する傾向にありますが、そこまで大きく変化しなかったり、認識の局在状態から脱却している場合もあることがわかります。

続いて、1 : 2 です。

肯定:否定 = 1 : 2, 自信効果なし

 

否定的な考えに出会う確率を高くすると、その情報に対する信頼度はすぐになくなってしまうことがわかります。

次は、2 : 1 です。

肯定:否定 = 2 : 1, 自信効果なし

逆に肯定する考えに多く出会うと、ほとんど線形に信頼度が増加しているのがわかります。

それでは、比率を 1 : 1 に戻して、自信を変えましょう。まずは、自信ありの方です。

肯定:否定 = 1 : 1, 自信あり

こちらも増加傾向にあります。伸びるときは一気に伸びている印象です。偶然かもしれませんが。

最後に、自信のない方です。

肯定:否定 = 1 : 1, 自信なし

自信がないと信頼度はやはり減少しますね。情報の比率が 1 : 2 のときと比べると持ちこたえているように見えますが、これは自信の効果が0.8だからかもしれません。それにしては、よく減衰しているようにも思えます。

5. まとめ

ということで、シミュレーションで遊びました。バイアスの効き方も自信の効き方も、完全に適当に決めているものですし、正直当たり前の結果が出てきたと思われます。それでも何か学ぶべきことがあったとすれば、自分の意見と反対の意見に多く晒されることで、視野の狭い状態から容易に抜け出せるようになるかもしれないということでしょうか。認識の局在は悪いことだけではなく、例えば確証バイアスをわざと利用することも考えられます。自分の認識を認識して、よりよい認識を目指していきましょう。