一つの認識描像

確証バイアスを逆に利用してわざと認識を歪める

確証バイアスとは、自分の中にある何らかの仮定が正しいかどうか判断する際に、その仮定を支持する証拠を積極的に集めてしまうといったバイアスです。つまり、何か検証したい仮定がある場合は、それが正しいことを示す証拠と間違っていることを示す証拠をどちらも探すように心がけるべきです。そうでなくては、認識が一方に偏ってしまいます。しかし、認識をわざと歪めることによって自分に利益をもたらすこともできるのかもしれません。

1. 信念を強めるための認識

時々、「なんでそんな非科学的なこと信じてるんだ?」と思わず口に出してしまいそうになる人を見かけます。もちろん信じるか信じないかはその人次第(にしても外側に影響を与えようとしないでほしい)なので、私のような他人がとやかく言うことはありませんが、逆に考えれば、これは「おおよその事は適切な手順を踏むことによって信じることができ、その信念を強化することが可能である」ということを示唆するのではないでしょうか。人は、何かを信じることによって様々な変化を経験します。もちろんそれが良いか悪いかは何を信じるのかによりますが、中には自分にとって良い影響をもたらすものもあります。例えば、清涼飲料水。過剰な添加糖が含まれていて健康に良くないという話を聞きます。そこで果糖の肝臓への負担や砂糖依存症、その他砂糖が健康にもたらす影響を調べることによって、その恐ろしさを知ることが出来ます。「ひょっとしてほんとに砂糖は健康に悪いのではないか」とあなたの中に仮定が生まれるのです。ここで、確証バイアスの力を用います。本来であればその逆、つまり「砂糖はそこまで健康に悪影響を及ぼさない」という証拠を調べて総合的な判断を行うべきですが、あえて確証バイアスに影響された状態をキープして砂糖の危険性についてより深く調べます。こうすることで「砂糖は危険である!」という信念があなたの中に強く形成され、結果的に清涼飲料水の消費を控えるようになります。つまり、何か止めたいものがあればそれに拮抗する仮定を自分の中に作り、確証バイアスを用いてその危険性を自身に確信させるのです。これは逆も然りで、何か促進したいことがある場合にそれを支持する仮定を作り、あとは確証バイアスに身を任せるといった具合です。このように、自分の行動や考えを制御したい場合に確証バイアスをあえてそのままにして上手い具合に認識を変更することが出来れば、実際にその行動を起こす可能性を高めることが出来るのです。

2. 注意点

例えば、実際に自分の中によい影響をもたらす信念を作り出すことに成功した場合、これを他者へ広めたくなるのは自然なことだと思います。しかし、それは止めた方が良いです。それがどんなに理にかなっていたとしても、あなたの認識は意図的に歪んでいる状態ですし、他人の行動を必要以上に制限してしまう恐れがあります。対象が異なるだけで、原理は占いを信じるのと同じようなものであることを了解してください。特に、客観的な正しさが要求される場面では注意してくださいね。