一つの認識描像

架空の概念が実在する複数の概念同士の関係を発生・強化する例

 「ウコンといえば?」
 こう問われたとき,あなたはどう答えるだろうか.「といえば?」の正体は,その概念から連想されるものを答えよ,ということなので,連想されるものを素直に答えれば良い.
 ・・・.
 思い浮かべただろうか.それでは,以下の問ならどうだろう.
 「素ウコンといえば?」

 は?なんだよ素ウコンって.ウコンは素だろ.と思われたかもしれない.何を隠そうこの概念,一般には存在しないのだ.まあそんなことはどうでもいい.ここから連想される言葉.これは,最初の問から変化したのではないかと思われる.

 私はふと疑問に思った.「ウコンとうどんは言葉の並びは似ているのに,どうして連想に出てきにくいのだろう」と.ちょっと考えないと出てこない.音も「ウ・オ・ン」で対応しているのに.しかも,同じ食べ物なのに.
 私はこの疑問に対して考えようとしたが,やめた.最近,「正しく考える」ということがどういうことなのかさっぱり分からなくなってしまったからだ.なので代わりに,「どうすればウコンとうどんを関連付ける事ができるだろうか」と考えた.
 まずは,音に注目してもらわなくてはならない.ウコンという言葉には,視覚的情報や健康に良いという認識など,さまざまな認識が結びついている.これらよりも先に,単純な聴覚情報の類似性に注意を向けさせる必要がある.
 しかしよく考えると,この2つの言葉はイントネーションが対応していない.ウコンは「ウ・コン(下がる)」だが,うどんは「う・どん(上がる)」である.これは致命的な欠陥で,せっかく上記の問題をクリアできたとしても肝心の音が異なるのであれば意味がない.しかし,これら2つの問題を完璧にクリアできる言葉が見つかった.それが「素ウコン」だったのだ.

 まず,素ウコンは実在しない.よって関連する視覚的情報の認識よりも「素ウコンってなんだよ!」というツッコミが先行する.そして,「素」の存在のおかげで「素ウコン」のイントネーションは「素うどん」と対応するようになる.すると,素ウコンという言葉自体に意識が向いた認識者はその音に注目するようになり,そして「ウコン」から「うどん」へ連想するよりも遥かに容易に「素ウコン」から「素うどん」へ連想する.
 さて,ここで改めて「ウコンといえば?」と聞くと,「うどん!」と答えられるのではないだろうか.ここでは面白いことが起きている.ウコンとうどんはそのままでは結びつきが十分でないが,「素ウコン」という架空の概念が介在することによって,これらの関係の認識が強化されている.これはまさに,「架空の概念が実在する複数の概念同士の関係を発生・強化する」ということであり,このように認識するとなかなか面白い現象ではないかと思うのだ.

 

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